東京都八王子市の高月整形外科病院(医療法人社団八九十会)

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手外科の主な疾患

 

ばね指(狭窄性腱鞘炎)

手指の使い過ぎなどが原因で発症します。MP関節掌側の疼痛・圧痛やPIP関節周囲の疼痛を生じます。症状が進むと指が曲がって伸ばせなくなったり、指の運動時に引っ掛かりがでたり、曲がったまま伸ばせなくなったりします。原因として腱鞘と呼ばれる部分で屈筋腱(指を曲げる腱)の通過障害があり、腱滑走時に生じる摩擦などで局所の炎症が起きています。  治療は局所の炎症を取り除くことが大事です。手指の安静を図り、アイシングなどで局所の腫脹と熱感を取ります。手指を握る、開くなどの反復動作を控え、長時間握ったままの状態を避けます。他に内服や外用剤を使用することがあります。症状が改善しない場合はステロイドの局所注射やリハビリテーションを行います。罹患期間が長期にわたり、症状の改善がない場合は手術を行います。基本的に局所麻酔の日帰り手術が可能です。
  手術では腱鞘(矢印)を切離      手術後の様子

ドケルバン腱鞘炎

 母指の使い過ぎで手関節撓側〜背側に疼痛や腫脹が出現します。パソコンやスマートフォンの使い過ぎでなることや、出産後の妊婦さんにも多く見られます。こちらも局所の炎症に伴うものであり、ばね指と同様の治療方法があります。こちらも経過が長い症例や難治例では手術を行うことがあります。
        皮膚切開部       母指を伸ばす腱を開放します

ステロイドの局所注射について

ステロイドの局所注射は局所の炎症を取り除く効果が非常に強いですが、問題点もあります。高濃度のステロイド注射や複数回の注射により指を動かす腱が断裂を起こす報告もあります。また注射後の感染の報告もあり、当院では注射した日は入浴を控えてもらっています。注射が頻回に必要になる場合は手術をお勧めします。

手根管症候群

絞扼性神経障害と呼ばれるもので、手関節の靱帯の部分で正中神経が圧迫されて生じます。高齢者で多く見られますが、手を酷使している若年者でも見られます。症状は初期では母指〜環指のしびれや夜間痛を認め、病期が進むと指先の知覚低下、母指の付け根の筋力の低下を認め、最終的に握力が低下したり、細かい作業がうまくできなくなります。  治療は内服、装具による安静、ステロイド局所注射などがよく行われます。その他に当院ではリハビリテーションによる神経滑走運動も積極的に取り入れており、軽傷〜中等度の手根管症候群の改善に貢献しています。しかし症状が重く、知覚が低下したり、母指がうまく動かせなくなった場合などは手術を勧めています。手術では正中神経を圧迫している靱帯を切離して圧迫を取り除きます。小切開での手術の他に内視鏡を用いた侵襲の少ない治療も行っており、日常生活の早期復帰が可能となります。
   内視鏡による手根管開放術    内視鏡使用時の傷の様子

母指がうまく動かせない(対立運動:掌を上にしてテーブルに手をのせたまま天井に母指が向けられない)場合には、他の指を動かす腱を動かして母指を動かし、つまんだり握ったりなどの動作がしやすいようにする手術も希望により併用します。この際は術後に数週間装具による固定が必要になります。

肘部管症候群

絞扼性神経障害の一つです。肘の内側の部分で尺骨神経という神経が圧迫されたり、肘の運動時に亜脱臼(元の位置から外れる)したりすることで生じます。環指と小指のしびれや知覚低下の他に、進行すると手の筋肉が減少し、ものをつまむ力が落ちたり、指を横に開いたり閉じたりすることが困難になります。
   
左手が重度肘部管症候群の手。筋肉が減り骨と骨の間の凹みが目立つ。

手術では肘内側を切開し、神経を圧迫している構造物を切離したり、必要に応じて神経の走行を変えて術後の圧迫から保護します。手術後の知覚や筋肉の回復には数か月〜1、2年を要します。

へバーデン結節

 手指の第1関節の変形性関節症のことを指します。使い過ぎ、加齢などの影響で関節の軟骨が痛み、疼痛や変形を生じます。関節リウマチとは異なりますが、関節リウマチでも手指のこわばりなどの症状を呈するため、必要に応じてリウマチの検査を行います。初期には関節のこわばりや腫脹などが現れ、使いすぎると熱感を持ち痛みがでてきます。病期が進むと変形が強くなり関節が太くなったり横に曲がったりしますが、疼痛は改善していきます。  治療は局所の安静が重要となります。そのためには手指の使用を減らし、テーピングや装具などで関節を保護します。さらに使いすぎた後はアイシングなどで冷やすことが大事です。必要に応じて炎症を押さえる内服や外用剤なども使用します。局所の炎症を押さえることが疼痛の改善と変形の予防につながります。近年エクオールなどの女性ホルモン調整サプリメントなどを服用される人も増えています。  保存治療で疼痛が改善しない場合や、変形を治したい場合は手術が必要になります。手術は関節固定術という第1関節を固定する手術が一般的で長期的な成績も良好ですが、術後関節が動かなくなるため細かい動作や仕事がやりにくくなることがあり、慣れるまで少し時間がかかります。当院ではその他に人工関節による関節の動きを残した治療も行っていますが、長期的に人工物の感染や破損などのリスクもあり、相談したうえで手術方法を決めています。
  
   スクリューによる関節固定術  シリコンインプラントによる人工関節置換術

粘液嚢腫

第1関節付近に発生する嚢腫で、中身は透明なゼリー状の液体であり一般的にガングリオンと呼ばれます。皮膚が薄くなり、ぶつけると痛みを感じたり、時々嚢腫がやぶれて感染することがあります。治療は内容物を排出・吸引したり、テーピングや装具で関節の動きを制限して保護します。これらの治療で改善しない場合は手術の適応となります。手術は日帰り局所麻酔で可能であり、嚢腫の処置と関節部のクリーニングを行います。
  
            指の粘液嚢腫

ブシャール結節

 指の第2関節の変形性関節症のことをブシャール結節と呼びます。原因はへバーデン結節と同じで使い過ぎや加齢などが影響します。その他に過去に突き指などで靱帯を痛めたり、骨折をした場合にも発生しやすくなります。ブシャール結節も症状が進むと疼痛だけでなく変形が進み、指が動かなくなってきます。  治療はへバーデン結節と同じで局所の安静が大事です。炎症が強い場合は局所の注射も可能です。変形や疼痛が強い場合は手術を行います。手術では関節を固定する手術もありますが、第2関節を固定すると指の動きが大きく制限されるため、関節の動きを残した人工関節手術を選択する方が増えています。
 シリコンインプラントでの人工関節置換術   表面置換型人工関節での手術

デュピュイトラン拘縮

 てのひらの皮膚直下の組織(手掌腱膜)が線維化して徐々に硬くなり、指が伸びなくなることで起こる病気です。最初のころはてのひらの皮下に硬結を触れる程度ですが、病気が進行すると皮下の硬結が浮き出て、指が伸びなくなり曲がってきます(屈曲拘縮)。指が曲がって日常生活や仕事に支障が出るようになると手術が必要になります。手術では硬くなった線維を切除したり部分的に切離したりします。指を伸ばす際に皮膚が足りなくなることがあり、皮膚欠損に対し皮膚を移動させたり皮膚移植を行うことがあります。
小指の皮下の線維がつっぱって
指が伸びない
  手術で拘縮を解除した

突き指、マレットフィンガー

 腱性槌指(けんせいつちゆび)
これは突き指により、末節骨に付着している伸筋腱(指を伸ばす腱)が断裂することにより、末節の関節が伸ばせなくなる状態です。 外観が「槌:マレット」に似ているので、このような名前がつけられました。 X線写真で骨折がないことを確認することが必要です。末節の関節をまっすぐな位置で装具をつけて固定することが必要です。 指を伸ばす腱はとても薄いので治るまでに時間がかかります。 途中で固定をやめてしまうと、腱は伸びたまま治り、末節の関節はしっかり伸ばすことができないままになります。 しっかりと、6〜8週間の固定を継続することが大切です。


 骨性槌指(こつせいつちゆび)
伸筋腱が末節骨に付着している部分で、裂離骨折を生じることにより、末節の関節が伸ばせなくなる状態です。 X線写真で骨折が確認されます。同じ突き指と思っても、こちらは骨折ですので骨接合する手術が必要です。約6週間固定して、骨癒合が完成したらピンを抜きます。
骨折により背側の骨片が転位
している
骨折を整復後にワイヤーを用いて
固定した

橈骨(とうこつ)遠位端骨折

 子供の骨折
走っていて転倒したり、スポーツで転倒したりという時に手をついて骨折は生じます。 子供の骨は骨膜が厚いので「ポキン」と折れずに、青竹や若木が「ミシミシ」と折れるようになります。 また、骨癒合が良好で、再構築(リモデリング:ある程度曲がって骨癒合しても、徐々に自然と本来の形に戻っていく)することが、成人の骨折とは異なる特徴です。 シーネ固定やギプス固定などの保存療法で治ることが多いですが、大きくずれた(転位した)場合には手術を行うこともあります。

 大人の骨折
転んで手を着いた時に、手首はよく骨折する部位です。 高齢になるにつれ骨が脆くなること(骨粗鬆症)に関係しています。骨折のずれ(転位)が大きかったり、関節内に骨折が入ったりした場合には手術が必要になります。 また、手関節の靱帯に合併損傷がある場合もあります。骨折を放置すると、変形したまま骨が固まり(変形治癒)、機能障害を残すことがあります。 また、遅発性に手指の腱(すじ)が切れたり、手指の先が痺れる手根管症候群という神経の障害を発症したりと、合併症がおこることもあります。 骨折は早期にしっかり治すことが大切です。
  
手をついて骨折し、背側に転位している       手のひら側からプレートを当てて固定した

小児上腕骨顆上骨折

 上腕骨顆上骨折は主に3〜8歳の小児に生じる骨折で、小児の肘の骨折の中では、過半数を占めて最も頻度の高い骨折です。受傷原因は、90%以上が転落や転倒の際に肘を伸ばして手をついて受傷しています。 骨折のずれが小さければ、ギプスや半ギプスを3〜4週間装着します 骨折のずれの大きい場合は、皮膚の上から鋼線を刺す手術、あるいは皮膚を切開して骨のずれを元に戻して鋼線を刺す手術が行われます。 また頻度は少ないのですが、時に肘から手にかけて血の流れが悪くなることがあります。 これには、ずれた骨が動脈を直接圧迫して生じる場合と、著しく腫れた筋肉が動脈を押しつぶして生じる場合(コンパートメント症候群)があります。血流不良を放置すると前腕の筋肉が壊死してしまう(フォルクマン拘縮)ので、緊急で手術を行う必要があります。 基本的に骨折がつかない(癒合しない)ことはほとんどありません。 ずれたまま骨がつくことがありますが、多少のずれは問題ありません。 しかしずれた結果として、上肢が肘で横方向に15度以上曲がると(内反肘変形)、見かけが悪いだけでなく、やがて上肢の機能が障害される可能性があり、追加の治療を検討することがあります。
     
肘の部分で骨折し、大きくずれている       骨折を整復後にワイヤーで固定した

成人の肘関節周囲骨折

 骨折転位(骨片のズレ)がないか、わずかの場合にはギプスや装具による治療を行いますが、残念ながら大多数は手術が必要となります。 とくに若年、壮年の場合には手術をして関節面を正確にもどして、プレートやスクリューでしっかりと固定し、早期から関節を動かすリハビリをしないと、癒合不全(骨のつきが遅くなったり、骨がつかない)や拘縮(関節が固まってしまう)が起こり、職場復帰は難しく、治療期間も長びくことになります。高齢者では、骨粗鬆症などで骨がもろいため、手術をしてプレートなどでしっかり骨折をとめておかないと、簡単にずれてしまいます。その他、皮膚の上から金属製のピンで固定することもあります。 ここの骨折では肘関節の拘縮がおきやすく、予防のため、できれば手術後2週前後で肘関節の運動リハビリを開始したいものです。 あくまで自分の筋力で行う自動運動を主体とします。 他人や器具による他動運動では関節周囲に異所性骨化(筋肉などに骨ができる)が起きていっそう動かなくなることがあります。 拘縮が改善しないときには、骨癒合を待って受動術といって関節のまわりの癒着やツッパリをとる手術も必要となります。目安は手のひらが顔につかない時です。
     
成人の肘周辺骨折       2枚のプレートで強固に固定した

腱損傷

 腱には指を曲げる屈筋腱と指を伸ばす伸筋腱があります。ナイフや機械で手を切った時に一緒に切れることが多く、腱が切れた場合は手術で修復しないと元の様に動かすことはできません。腱を修復する手術の後はリハビリテーションが重要です。修復した腱が治るまでには時間がかかりますが、その間指を全く動かさないと癒着といって腱と周囲の組織がくっついてしまい、指が固まってしまうからです。その予防には定期的に腱を動かして(滑走させて)癒着させないことが大事ですが、動かす際に力を入れすぎると修復した部分が再度切れてしまうことがあります。その力の調整には経験が必要であり、腱の修復後は手指専門のリハビリテーションが望まれます。当院ではハンドセラピストと呼ばれる手指専門のリハビリテーション担当者が複数在籍しており、状態に見合ったリハビリ内容を提供しています。
指を切った際に中指と環指の屈筋腱
が切れ、指が曲がらない
   
  腱修復7か月後

指切断・爪欠損

 切断指
 切断された指の状態が良好であれば緊急手術により指をつなぐことができます。しかし全員が成功するものではないため、ご理解を得た場合に手術を行っています。手術後は1〜2週間程度の入院が必要になります。さらに手術後にはリハビリテーションが必要となるため、定期的な通院が必要です。 手術がうまくいかなかった場合にも、別の場所から皮膚や脂肪を移植し、形態の良好な機能的な指を再建しています。


 爪欠損・爪変形
 指の切断などの外傷による爪欠損、先天的な爪欠損・変形にも手術による治療を行っています。爪の変形に対しては爪を支える土台(爪床)を修正したり、足の指から爪床を移植することで形態を改善します。  爪が欠損している場合に爪の再建を希望される場合は、足の指から爪を移植します。その際は、爪を採取する足趾の犠牲ができるだけ少なくなるように配慮しています。

神経損傷、断端神経腫

 神経損傷
 神経は一旦切れると切れた場所はそのままでは元に戻りませんので修復が必要になります。受傷後に時間がたっていない場合は直接神経断端を縫合します。しかし時間が経過している場合は直接縫合できないことが多いです。これまでは他の部位から神経を移植(自家神経移植)を行っていましたが、神経を採取するのに新しい傷を加える必要がありました。近年人工神経が使用可能となり、自家神経移植を行わなくても神経欠損部の修復が可能となっています。神経の種類、欠損の長さなどに合わせて最適な治療を提案しています。 また、神経損傷に対する運動麻痺に対しても治療を行っています。怪我をして日が浅い場合は神経を修復して回復を待ちますが、時間が経っている場合(受傷より3〜6か月以上)は他の指や手関節などを動かす腱を移動させて(腱移行術)機能的な再建を行います。腱移行術を行った場合は数週間の固定とリハビリテーションを要します。


 断端神経腫
 傷を負った所、瘢痕ができた所に強い神経痛が残ることがあります。ぶつけたり、触ったりするだけでビリビリした痛みを感じます。損傷した神経の断端部が周囲組織とくっついていることが多く、手術やリハビリテーションなどで改善が期待できます。お困りの際はご相談ください。

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名誉理事長 山口利仁の功績

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TEL 042-692-1115(代表)
FAX 042-692-1241

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